介護士として利用者と関わる際、話しが通じなかったり、いくら話しても納得しなかったりすることは少なくない。そうした状況が重なると、イライラして精神的にも疲れ、介護士に向いていないのではないかと思うものだ。しかし、介護士として同じ利用者と何度も顔を合わせていれば、利用者本人の性格や口癖などが少しずつ見えてくる。
多くの場合は、介護士に迷惑をかけたいのではなく、何らかの背景が関係しているため、利用者の置かれている状況や心理状態を考えてみたり、周囲の人に利用者の様子をヒアリングしてみたりすると良いだろう。
例えば、認知症を患っている利用者の中には、ある程度自分がもの忘れをしていることに気付いているケースがある。本人は物忘れの不安、会話が通じない怖さ、大事なことを覚えていない腹立たしさで、自信喪失と混乱で心の中は波立っているものだ。そんな状況に嫌気が指して「足手まといになる」「消えてしまいたい」などと弱気な発言をする利用者もいる。
人間は本能的に「相手に受け入れてもらいたい」という願望を持っており、認知症の利用者もその願いは同じだ。認知症の利用者との対話を円滑にするためには、利用者自身の話を引き出す必要がある。そこで、役に立つのが、昔の生活が連想できる写真を一緒に見ながら話をするということ。人の昔の記憶と新しい記憶は、脳の中で貯蔵庫が違っていると言われている。認知症の人は、その貯蔵庫の関係で、昔のことはしっかり覚えている傾向にあるのだそうだ。そのため、ぜひ利用者と一緒に昔話をすることをおすすめする。